column 1 「理系の僕」がそれでも組織開発を書く理由

なぜ、組織開発が求められるか
コミュニケーションが得意というわけではない。
むしろ、口数は少ないほうかもしれない。
それでも、今こうしてエッセイを書こうとしている。
少し、不思議な気分だ。
もともと僕は、ものづくりが好きだった。
何かをつくる――その行為自体が面白かった。
知らない世界に触れたとき、見たこと・聞いたこと・読んだことを
いったん壊して、自分なりに組み立て直してみる。
そのやり方を覚えてから、日常が“観察対象”のように感じられるようになった。
「お、これ、何かのネタになるかも」
そんなふうに思える瞬間が、あちこちに現れるようになっていった。
とはいえ、文章を書くことはまったく別の話だった。
とくにエッセイなんて、これまで縁がなかった。
僕が慣れていたのは、理系の論文調。
「〇〇は△△である。しかし□□であるとするならば……」といった、
定型と理屈で構成された、少し無機質な文章だ。
最初にエッセイを書いたときは、まったく勝手がわからなかった。
空回りしながら、それでも少しずつ、自分に近い言葉を見つけていった。
不器用でも、“伝える”ということと、
少しずつ向き合えるようになってきた気がする。
このエッセイで、僕が特に届けたい相手がいる。
それは、技術力を持ちながら、その面白さを“伝えること”に苦戦している人たちだ。
僕自身、技術職からキャリアをスタートさせたから、よくわかる。
たしかに、商品やサービスには違いがある。
でも、それがうまく伝わらない。
むしろ、良いと思うものほど、
上司の「わからない」のひと言に言葉が詰まってしまう。
お客様に売り込んでも、会社名だけで話すら聞いてもらえない。
そんなもどかしさに悩んでいるあなたに、届けたい。
あるいは、文系出身の営業の人たちから
「いいなあ、その技術、自分も持っていれば……」
そう羨ましがられたこともある。
でも、だからこそ伝えたい。
宝物を“持っているだけ”では届かないという、もどかしい現実を。
僕のホームページには、本棚の真ん中に大きなレモンがある。
「なんでここにレモンがあるの?」と、よく聞かれる。
じっと見ていると、僕の中では「レモン」が「檸檬」に変わり、
やがて「すっぱい想い出」になる。
そこから、うまくいけばアイデアをひねり出す。
一見すると違和感のあるその存在が、僕にとっては発想の入り口でもある。
でも、この感覚を、誰かに“伝わる言葉”に変換するのは簡単じゃない。
このギャップの正体はなんだろう?
その問いに、いま僕は向き合っている。
そして最近は、
「勇気」と「尊敬」、そして「科学」――
この三つの言葉に注目している。
そんな中で、少しずつ見えてきたものがある。
それが「組織開発」だった。
かつての僕が見過ごしていた“人と組織の関係性”に、今あらためて光を当てようとしている。
ここからは、なぜ今、組織開発が求められているのかについて、少し整理してみたい。
―なぜ、組織開発が求められるか―(構造編)
【1】概況:なぜ今、組織開発が必要とされているのか?
- かつての「安定的な組織運営」モデルが通用しない時代に入った
- テクノロジー・市場・働き方・価値観の変化が複雑かつ加速的
- 多様性と不確実性の中で、マネジメントは「命令と統制」から「対話と共創」へ
- このような状況下で「成果を出し続ける組織」には、自律的で柔軟な組織文化が必要不可欠
- 特にお客様に自社の価値を伝えるには知識だけでなく、組織(文化)をベースにした実践の場数が必要
【2】組織開発とは何か?
●定義:誰も見ていなくとも、社員の姿勢(行動・決断など)や基準が揃っている組織文化を作る「内発的成長支援の仕組み」こと。
- 特徴:
・効率化・合理化ばかりの施策でなく、長期的で継続的な変化プロセス
・「人間性」「関係性」「システム思考」を重視
・表面的な制度改革ではなく、風土・対話・構造の三層にアプローチ
【3】組織開発が今、必要な5つの理由
- 変化に適応するための「学習する組織」が求められている
知識や経験の陳腐化スピードが速く、組織の“学び直し”が不可欠 - 人が資本の時代に「関係性の質」が成果を左右する
心理的安全性・信頼・対話の力が組織の価値創造の源泉に - 成果だけでなく「プロセス」と「育成」に価値を置く文化の醸成
自律的に動ける人材と環境が揃ってはじめて成果が持続する - 「見えにくい構造(空気・風土)」が行動を支配している
行動変容の前に、前提となる空気や無意識の慣習を可視化・再設計する必要 - 個人ではなく「組織全体の進化」が求められている
リーダー一人の変化ではなく、構造・関係性・役割が連動して初めて組織は変わる
【4】知識アップと実践環境の整備が肝要である理由
- 知識アップ(理解)
組織開発の理論・背景・アプローチを知ることで、「なぜ変化が必要か」を個々が腹落ちする
経営層から現場まで、共通言語と問題意識の共有が可能になる - 実践環境の整備(場づくり)
学んだ知識を試し、振り返り、修正できる「安全な実験の場」が必要
例:対話の場、振り返りの時間、クロスファンクショナルな実践チームなど
知識があっても、実践の場がなければ変化は定着しない
【5】まとめ
- 組織を「開発する」ということは、人を信じ、育ち合える場を整えること
- 知識だけでも、効率化・合理化でも、仕組みだけでも足りない。「知識/好奇心 × 場づくり/対話する姿勢」が不可欠
- 組織開発は、特別な改革ではなく、「日々の関係性」に根差した変化の営みである
【6】PENGUIN FIRMにできること ―その一歩が、組織の未来を変える。
- 私たちは、「問い」から始まる組織づくりを応援します。
組織をただ“管理”するのではなく、そこに関わる一人ひとりが、“意味”と“つながり”を感じられるように。 - そして、皆様の価値が皆様のお客様に「GIFT」として変化するように。
- 私たちが提供するのは、以下の3つの“習慣づくり”です:
- 1.問いを立てる習慣
思考の出発点は、「勇気・尊敬・科学」のある良い問いから。
問いを立てる力が、内省を深め、行動を変え、組織の成長を導きます。 - 2.視点を変える習慣
同じ景色(フレーム)も「勇気・尊敬・科学」の見方を変えればチャンスになる
技術・営業・経営、異なる立場の“ファシリテーター”となる視点を育てます。 - 3.GIFTの習慣
成果や知識は、“渡し方”で価値が変わる。
「相手のその先」を想像する、GIFTの発想が文化を変えます。 - 組織には、それぞれの“文脈”と“らしさ”があります。
「異質」がわかるPENGUIN FIRMだからこそ、私たちは「異質」をともに磨くアプローチで、組織の育成・成長支援と、価値変化を伝えるプロセス作りを伴走します。
【7】主要参考文献
- 失敗の本質 日本軍の組織論的研究 戸部良一 他
- 文明が衰亡するとき 高坂正堯
- あの戦争はなんだったのか 保坂正康
- 「超」入門失敗の本質 鈴木博毅
- 競争の戦略 M.Eポーター
- マネジメント P.Fドラッカ
- 「空気」の研究 山本七平
- 世界は贈与で出来ている 近内悠太
- 営業マンは断ることを覚えなさい 石原明
- ものづくりのこころ 常盤文克
- ポリマーアロイ・ブレンド DJK社カタログ
- 工業材料としてのポリマーアロイ 井出文雄
- コンパウンデイングにおけるポリマーアロイの構造制御因子 成沢郁夫
- 星の王子様 サン・テクジュペリ
- 「チ。」 魚豊
- 問のデザイン 創造的対話のファシリテーション 安斎祐樹・塩瀬孝之
